吉祥寺駅前に建つ築40年を迎えるオフィスエントランスのリノベーションデザインである。
既存のエントランスは、当時の流行を色濃く反映した素材を用いて造られた空間で、多くの名画と相まって、そこはかとない懐かしさを感じさせるものだった。変わりゆく街の様相と共に、新たなニーズへの対応が当然のように求められた。機能としての建物寿命に疑問を感じて思案していたところ、驚くべきことに、クライアントは竣工当時の現場所長を今なお現役でメンテナンスに携わらせていることを知り、唯々感心した。「デザインの一新」という選択肢は排除して、この古き良き雰囲気を継承しつつ、この建物ならではの魅力をより一層加えることを考え、木・石・鉄といった自然素材を中心に、既存との調和を図りながら丁寧に紡ぐことを心掛けた。この空間には、大切にしてきた人々の想いが宿り、目新しいオフィスビルでは得難い貴重な時間がながれているように思う。
所在地 | 東京都武蔵野市吉祥寺 |
サインデザイン | tatimo |
施工 | アネシス |
改装面積 | 94.54㎡ |
竣工 | 2022年 |
photo by Tomohiro Sakashita